2022.05.02雪水清花

信頼とくつろぎの力

「こうありたい」「こうなりたい」という“理想の自分”像。
私たちは“理想の自分”を思い描いて、日々努力したり、葛藤したりします。

うまくいっている時には、「いやいや、まだまだ。」「もっともっと。」と、自分を鼓舞して一層努力を重ねます。今以上にがんばることで、理想の自分にもっと近づけるよう励むのです。そして自分を労うことよりも、至らないところ、足りてないところを“冷静に”“客観的に”分析して、判断して、計画をたてて、自分を律しながら、さらに努力を重ねるのです。

一方で、うまくいかない時。
自分のどこがいけないんだろう、何が足りないんだろう、と、ここでも自分を分析して、判定します。これに加えて、うまくいかない時は、自分で自分を批判します。至らない自分の能力や力量のなさを自分で責めて、自信を失います。自信がないのでなにをやるにもおどおどした状態になり、ますます自信をなくします。最後には、「どうせ自分にはできっこないんだ」といじけて、自ら落伍者のレッテルを貼り、ふてくされたりしてしまいます。そして心の底に消化できない悲しみや憤りを抱えたまま、自分の存在を重たくしてしまうのです。

この二つの状態、どちらもともに、いつも自分を分析し、判定している点では変わりません。つまり、常に「自分で自分を見張っている」状態です。
自分を監視し続けながら、一方は“努力”という名の手綱を一層引き締め、自分を厳しく縛りあげます。少しでも緩んだり、気を抜いたりしたら、これまでの努力がたちまち無駄になってしまうといわんばかりの厳しさです。力を抜くことをとにかく許さない、そんな状態に自分を追い立てていきます。
そしてもう一方も、常に自分を監視し続けながら、自分の至らなさ、不甲斐なさを見つけ、あげつらって、いじめます。ここでは監視に加えて、自分への非難や断罪も加わるので、一層苦しくなります。
どちらもともに、「自分への信頼」よりも、「自分への恐れ」でいっぱいの状態です。そしてどちらも、「自分は至っていない」という前提に立っている点では、まったく変わらないのです。

私は植物療法士として、フラワーエッセンスやジェモ(新芽)エッセンスなど、人の心や感情に働きかける植物の力を使ってクライアントさんとのセッションにあたりますが、植物のエネルギーが人の心に働きかける最大の力は、「自分のあるがままの本質を、ありのままに認め、受け入れること」だと感じます。



植物は、自分がいつ発芽するかとか、どうやって育つかとか、隣の植物より美しくなれるかとか、そんなことは一切気にしません。自分に備わる本質や、自分が授かっている「成長の青写真」を完全に信頼して、それをただ素直に現していきます。

自分のなるべき姿に、なるべきタイミングで、なっていく。

そこには一切の疑いも、力みも、比較も、批判も、総括もありません。陽を浴び、風を受け、大地に根ざし、水を吸い上げ、自然界の大きな力と必要な時間に委ねながら、自分の成長のリズムとペースに集中する。そして「自分がなるべき姿」をただただ信頼して、あるがままに表現していく。
美しさと力強さと多様性で彩られた植物の世界は、「自分への完璧な信頼とくつろぎ」という、批判や恐れとは真逆のエネルギーによって作り上げられているのです。

フラワーエッセンスも、ジェモエッセンスも、植物の魂が宿るものとされています。
植物の魂。それは、様々なことを人間に思い起こさせてくれます。

「誰の中にも、その人だけの“完璧な成長の青写真”が備わっていること」
「成長とは、自分が本来“なるべき姿”になっていくプロセスであること」
「それは忍耐や苦行ではなく、自分への信頼とくつろぎを学んでいくプロセスでもあること」
「そして、そのために必要な“時間”に対して、もっと謙虚であること」

道端には色とりどりの花が咲き乱れ、街路樹の新葉も美しい季節です。
ほんの少し肩の力を抜いて、周囲をゆっくり見渡してみると、完璧なタイミングで自分の季節を謳歌し、この世界への参加を楽しむ植物たちのメッセージがあふれています。
色、形、香り。五感で捉える植物の美しさ。
そして時には、植物たちの生命の力と魂の声を、じっくり感じてみませんか。