2020.12.04雪水清花

豊かに振り返り、豊かに臨む ~12月の恵み~

早いもので、今年ももう12月。
時の過ぎゆく速さには毎年のことながら驚いてしまいますが、12月は、この時期だからこそ気づける深い豊かさにあふれた、特別な季節であるように感じます。

朝の日の出は遅く、夕方にはあっという間に陽も落ちて、長い夜が訪れる12月は、全身に感じる本格的な寒さや暗さの一方で、同時にたくさんのあたたかさが味わえる季節です。



家々の窓辺に灯るやわらかい明かり。
指先に触れるマグカップのじんわりとした温かさ。
コトコトと煮込んだお鍋の湯気や、熱々の味わい。
冷えた体がじっくりとほぐれていくお風呂の、とろけるような幸せ。
太陽をいっぱい浴びた布団の、温かい匂いと手触り。

「寒さ」や「暗さ」と同時に、その対極にある「温かさ」や「明るさ」を、全身の五感で捉えている。それを強く意識できるのは、冬の始まりのこの季節ならではの大きな恵みだと感じます。
また、こうした「温かさ」や「明るさ」をありがたく強く感じると、今度は「寒さ」や「暗さ」の中に息づく「清らかさ」や「静けさ」も、あらためていきいきと感じることができます。
12月は、対極の中に、ものごとの豊かさを細やかに味わえる恵みの時なのです。

この季節、街を歩いていても、この“対極に息づく豊かさ”がたくさん見つかります。

クリスマスの時期、街路樹は美しい明かりで彩られます。家や店の軒先には、豊かな生命力を感じさせる、赤や緑の色鮮やかなポインセチアやシクラメンが飾られます。窓辺にはクリスマスツリー、玄関には針葉樹や木の実で作ったクリスマスリースやスワッグ……。そのどれもが、直接手渡す「物」ではないけれど、それを見る誰かに楽しんでもらいたいという「思い」を形にした、とても素敵な贈り物だと思うのです。
そして実は同時に、その贈り物を飾る人自身も、喜びやワクワクという素敵な贈り物を受け取っているのではないでしょうか。
親しい人だけでなく、通りすがりの誰かにも、季節の美しい彩りを楽しんでもらえる喜び。それは、目に見える人間関係だけでは得られない、より大きく広がる喜びです。見えないつながりの中に、人の温かさや優しさを、強く確かに感じとる喜びです。

贈り物は、受け取る人ばかりでなく、それを届ける人にも喜びをもたらしてくれるのです。たとえ、届ける相手が誰だかわからなくてさえも……。
お歳暮、クリスマス、街角や家々の飾りつけ……。
そこには、「受け取ること」の対極にある、「与えること」「分かち合うこと」の大きな豊かさがあふれています。

12月は、対極のものの中に備わる本質に、自然と意識を向けさせてくれる素敵な季節。

「寒くて暗い冬」の中でこそ感じる「温かさ」や「明るさ」。
「受け取ること」ばかりではない、「与えること、分かち合うこと」の喜び。
両方の極を味わうからこそ浮かび上がる本質的な豊かさに、たくさん気づく。それこそが、12月という季節からの大きな贈り物なのかもしれません。

1年の最後の月。そして新しい年を間近に控えた月。

「自分の身に起こったこと、そしてこれから起こること。それを“いい”“悪い”で区別せず、対極の中に、どんな本質を見つけられるかな?」

12月は、そんな風に語りかけてきます。