つながり響き合う植物たち 〜フランス研修紀行
7月6日から16日まで、フランス南部のオート・アルプ地方にある、植物療法ブランド「Herbiolys(エルビオリス)」本社を訪れ、ジェモセラピー(新芽療法)とフィトテラピー(植物療法)のフィールドワークを体験してきました。
今回の研修旅行は、現地の薬草の摘み手や自然療法士の方々とともに、雄大な野山や森、畑を歩きながら、植物の生命やエネルギーを「感じる」ことを通して、自然界の“生命の本質”に触れることができる、本当に豊かな学びでした。
◆「植物と対話すること」
Herbiolys社の創設メンバーであり、フランスの芳香植物および薬用植物の生産者の専門組合「Syndicat des Simple」(サンディカ サンプル)の設立メンバーの一人でもあるカトリーヌ・カスティーユさんは、薬草の摘み手として、長きにわたり植物たちと共に生きてきた「植物の専門家」です。
植物は、どのような土地で育っているか、どんな植物と共に生きているか、いまどんな状態か、そして摘み取りに一番適したタイミングはいつなのか、そういったことをきちんと見極めることで、初めてその植物が持つ有用成分の恵みを、最大限に頂くことができます。
カトリーヌさんは、まさにその道のプロフェッショナル。植物たちの状態を日々丁寧に見守りながら、エネルギーと成分が最も高まった時を見極め、感謝とともに植物を摘み取ることができる専門家です。
Herbiolysは、植物のエッセンスを作る時、彼女が摘み取った新芽や薬草、花々を用いて、自社の製品作りにあたっています。
彼女のラボの敷地には、本当に多種多様な植物たちがのびのびと共存している姿が印象的でした。
豊かに咲き乱れる花々の間には、たくさんのミツバチや蝶々が飛び交い、自然の循環の豊かさが美しく息づいています。
ここで生きる植物たちは、大地と調和し、互いに安心して生きている。
そんな感覚を非常に強く感じる場所なのです。
「私は、いつもここの植物たちとお話ししながら、コミュニケーションをとっているのよ。それはとても長い付き合いだから、お互いのことがよくわかるの。」
そんな風に話すカトリーヌさんの言葉から、この場所の植物たちから発せられる「安心感」がどこから来るものなのか、その一端を垣間見たような思いがしました。
ジェモセラピーで用いられるブナやトネリコの木々の葉が、さわさわと風に揺れる様子は、本当に木々が「お話ししている」かのようです。
そんな植物たちの声に耳を傾け、心の目で見つめ、互いの存在をいつも感じ合いながら、生きることができる場所。
種を超えた“対話”が、日常の中で当たり前のように交わされている場所だからこそ、みんなが安心して生きているんだ。
そんな風に、感じました。
Herbiolys社のジェモエッセンスやフィトエッセンスを初めて飲んだ方が、「なんだかほっとする」とおっしゃることがよくあるのですが、それは、植物の成分の働きだけでなく、植物たちが安心して生きている、その穏やかなエネルギーが、エッセンスの中に含まれているからなのだと思います。
人間でも、植物でも、そして動物でも、心で向き合い、心で対話することができた時、そこには種を超えた「本物の繋がり」が豊かに生まれます。互いへの信頼関係に基づいた「安心感」は、そんな健やかな繋がりを通して育まれていくことを、植物たちと向き合うカトリーヌさんの姿から、教えてもらえたような気がしました。
◆「大きな視点で、はじめて見えるもの」
Herbiolys社の敷地内に広大に広がる農園でのフィールドワークでは、農園責任者のエリックさんとともに、植物の生態に触れながら、土地とのつながりの中で生きる植物たちの学びを深めました。
地中海エリアとアルプス高山の植物が出会う場所に位置するHerbiolysの敷地は、多様な生態系が豊かに息づく土地です。
エリックさんは、野山に息づくひとつひとつの植物を丁寧に見ながら、氷河時代以後の地質と植物とのつながりや、自然地理学の観点から見える生態系の豊かさ、そしてこの土地に生きる植物たちと向き合う時に大切にしていることを、ミクロとマクロの両方の視点から、真摯に語ってくれました。
植物を育てる畑では、その植物が自然の中で育つ本来の環境を作ることを、なによりも大切にしていると語るエリックさん。
彼の話の中で、何度も出てくるキーワードが「森」でした。
「さまざまな動植物が共生している『森』は、その豊かな生態系ゆえに互いを補い、互いを助け、本来の自己修復機能をきちんと発揮できる状態にある。そして森は、完璧な空調設備を備えていて、夏は涼しく、冬は暖かい。
自然は、決して複雑な話ではなく、本当はとてもシンプルで美しいものなんだ。」
そう語る彼の言葉は、非常に力強く、心に残るものでした。
Herbiolysの農園も、森のような自浄作用を持つ環境で、それぞれの植物が好む本来の土壌や日当たり、風通し、水を再現しています。
そしてここでも、たくさんのミツバチや蝶の働きが植物たちを助けていました。
森とは、「共生」を象徴する場所です。
そして共生とは、互いの個性や持ち味を認め、尊重することです。
そうやって、みんながそれぞれの命を、のびのびと全うすることで、互いが互いを真に生かし合うことができる。
「森」が意味する共生とは、個々の生命への深い敬意によって奏でられる、自然界の美しいハーモニーなのだと思います。
植物療法を取り入れることは、自分の中に「森を作ること」です。
臓器や細胞のひとつひとつの働きを見つめ、互いが互いを補い合う働きに敬意を持ち、そして心と体のつながりと循環を大切に育むこと。
「森」がもたらす、自然界の大きな“つながり”と“調和”のエネルギーとひとつになっていくことが、植物療法を取り入れることの本質であることを、深く感じました。
◆「見えないものを、見ること」
「この場所では、何が見えますか? 何を感じますか?」
Herbiolysの薬草の摘み手であるトマさんは、草原や森で、静かに私たちに問いかけます。
トマさんのフィールドワークは、薬草植物のひとつひとつの効能を学ぶだけでなく、その場所で「何を感じるか」を意識することを大切にした、精神性の高いワークでした。
薬草植物や樹木に関する深い知見を持つトマさんですが、それだけでなく、植物の生き様そのものや、他の植物との関係性、さらには、地中深くに根を張る植物たちの“見えない繋がり”にも思いを馳せながら、「表には現れていないものを見ること、感じること」によって、植物たちからさまざまな情報を教えてもらう知恵を伝えてくれました。
この視点は、植物療法のセッションにおいても、非常に大切な要素となるものです。
表に現れている不調だけをみるのではなく、その人の性格や気質、生活パターン、過去の出来事、どこで生まれ育って、どんな幼少期を過ごしてきたか、などなど、その人の全体を見ながら、トータルに捉えること。
そして、その人にとって力になり得るレメディを考えていく時にも、植物の薬効や作用だけで考えるのではなく、その植物の姿形や、生きる場所、好む土壌、生き様、他の植物たちとの関係性など、植物の“個性”をトータルに捉えながら、クライアントにとって一番相性の良い、適切なものを考えていくこと。
その意味と、大切さを、改めて感じました。
目に見えるものだけで、判断しない。
見えないものに思いを馳せることで、いろいろなものが見えてくる。
植物療法のセッションでも、講座でも、決して忘れてはいけない大切な姿勢だと感じます。
今回の研修旅行は、1日1日が本当に濃密で、美しい日々でした。
フランスのジェモセラピー協会会長のアナイスさんの特別講義では、名前を伏せたジェモエッセンスの瓶を手に取りながら、その体感や感覚をつぶさに感じ取り、エッセンスのエネルギーを、人の心と体が精妙に受け取ることができることを、身をもって体感することができました。
Herbiolysのラベンダー畑の収穫作業は、そこに携わる人々の喜びと笑顔が本当に印象的でした。植物の仕事に携わることの責任と誇りが真っ直ぐに伝わってくるその姿から、たくさんのインスピレーションを得ることができました。
そしてパリで訪れたエルボリストリー(薬草薬局)では、長い歴史を持つヨーロッパの薬草文化が、いまでも人々の生活の中に当たり前のように豊かに息づいていることを知りました。
フランスの雄大な自然の中で、そこで生きる植物たちの生き様に直に触れ、学ぶことができたことは、本当に大きな経験です。
植物たちが根ざす力強い大地、そこから見える雄大な山々、ともに生きる動植物、降り注ぐ太陽の光や、草原を吹き渡る風、雨となって大地を潤した水……
ひとつの植物を形作った自然界のすべての力が、生命の力として凝縮され、そしてその原風景は温かい“記憶”として、植物の身の内に生き続ける。
植物から作られたエッセンスをいただく植物療法は、植物が身の内に宿した自然界のすべての“調和”と“つながり”の力を、私たちに分かち合ってもらう療法なんだ、ということ。
植物に深い敬意を抱いて、植物とともに生きる人々の、誠実で美しい言葉を通して、大切なことをたくさん感じ、受け取ることができた、そんな素晴らしい日々でした。
逢いことばは、フランス・Herbiolys社監修の植物療法講座をお伝えする認定校「エコールドエルボリストリー東京杉並校」として、ジェモセラピーやフィトテラピー、フラワーエッセンスなど、日仏合同の認定資格を取得できる、植物療法の各種講座を開講しています。
各回の講座では、個々の薬草植物の具体的な働きや、エッセンスの活用方法、症例等を詳しく学びます。
また、長い歴史や文化の中で、それぞれの植物がどのように用いられてきたか、どんな場所で、どんな風に生きているかなど、ひとつひとつの植物にまつわる背景や物語も丁寧に見つめながら、思考とハートの両方の側面で、植物たちの癒しの力に繋がることができる講座です。
そしてなによりも、体の臓器や器官の働き、そして心の働きを、有機的な繋がりの中で捉える視点を養うことができるのも、エコールドエルボリストリーでの学びの大きな特徴です。
それにより、外側に現れる様々な不調や症状に対して、根本的なアプローチから植物療法を活用できる知識やスキルを、しっかりと身につけていくことができます。
今回のフランス研修で学んだ植物たちの叡智や、生命の本質の美しさ、そして素晴らしさを、セッションや講座を通して、これからも大切に、そして誠実にお伝えしていきたいと思います。
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◆自分の花を開かせる〜植物たちが教えてくれる“生きる力”
◆ジェモセラピー各種講座(日仏合同認定資格講座)
◆エルビオリス・フィトテラピー講座(日仏合同認定資格講座)
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